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京都市は2011年5月に「震災がれき受け入れ可能」と国に回答しました。市民の意見により2011年10月に受け入れ意思を撤回したにもかかわらず、2012年3月頃政府・産業界・マスコミ一体となった広域処理推進キャンペーンにより、2012年4月に「試験焼却後受け入れ可能性あり」と再表明しました。

2012年5月29日に行われた「第1回京都市災害廃棄物広域処理に係る専門家委員会」は200名の傍聴者で会場は満席。市民の高い注目を集めるなか、環境省側が2012年7月に要請を取り下げました。

行政は「処理計画の目処が立った」という理由で、京都市での震災がれき受け入れを見送りましたが、がれき焼却に伴う健康被害リスクについては認めていません。放射性物質等の健康影響の過小評価は、食の安全や防災等の政策にも反映することです。今後も行政を注視し、申し入れを継続する必要があると考えます。


がれき拡散問題とは

◆PDFデータはこちらから http://hostingserver.sakura.ne.jp/data/map3-5.pdf ◆作者botanさんブログ「子供たちを放射能汚染から守りたい」http://ameblo.jp/kansaibotan/

■1. 何が問題か

  • クリアランスレベル(放射性廃棄物の基準)が大幅にゆるめられている。

  • 放射性セシウムだけでなく、原発から放出されたすべての核種について対策が必要。

  • 一般焼却場での焼却を前提としているので、大気への漏れが心配される。

  • 一般埋立場への埋立を前提としているので、土壌・水環境への漏れが心配される。

<1.クリアランスレベルについて>

原子炉等規制法では、10マイクロシーベルト/年(目安として放射性セシウム合計100ベクレル/kg程度)を、放射性廃棄物かどうかを区別する基準(クリアランスレベル)として定めています(※1)。従来この基準を超える廃棄物は、放射線障害を防止するためドラム缶封入・コンクリートピットへの埋設など、厳格な管理が義務づけられてきました。

そもそもクリアランス制度は、原子力発電所の廃炉時代を迎えるにあたり、解体廃棄物にかかるコストを削減するために2005年に導入された制度です(※2)。導入にあたっては、専門家や市民から、「原発解体資材をリサイクルすべきでない」「クリアランスレベルが緩すぎる」と反対運動が起こりました。

「10マイクロシーベルト/年(目安として放射性セシウム合計100ベクレル/kg程度)」という現行基準ですら「安全ではない」「ゆるすぎる」と反対意見があるなか導入されたのです。それを環境省は、2011年6月13日、今回の災害廃棄物処理にあたり次のように大幅な緩和を行いました(※3)(※4)。

対象 放射能汚染を判断する基準 (放射性セシウム合計) クリアランスレベルの 扱い
燃やすごみ (木くず等) なし 適用しない (何でも燃やせる)
焼却灰・ 不燃ごみ 8000ベクレル/kg 80倍に緩和
リサイクル後の 製品 100ベクレル/kg 適用する

群馬県前橋市の前橋水質浄化センターでは、2011年7月26日に、下水汚泥焼却灰から放射性セシウムが合計12320ベクレル/kg検出されています。同年8月4日に空間線量測定を行ったところ、焼却灰保管場所で4.1マイクロシーベルト/時、溶融炉集塵機下部14.0マイクロシーベルト/時が検出され、放射線管理区域に設定されました(※5)。

環境省は「8000ベクレル/kg以下の焼却灰は、埋立作業者の安全も確保されるレベル」と言っていますが(※3)、本当に問題ないのでしょうか。2011年7月29日に日本弁護士連合会が提出した意見書(※6)にあるとおり、放射性廃棄物かどうかを区別する基準については現行基準によるべきであり、その基準を上回るものについては放射性廃棄物として厳重な取扱いをするべきです。

<2.焼却における問題点>

環境省は、焼却前の廃棄物について、放射性物質の基準を定めていません。「排ガス処理装置としてバグフィルター及び排ガス吸着能力を有している施設では焼却可能である」としています(※3)。つまり「放射性物質がどれだけ付いていても一般焼却炉で燃やす→焼却炉の有害物質除去装置で放射性物質を取り除けばよい」という考え方であり、入口対策をせずに出口対策のみ行うという姿勢です。

東京都の汚泥焼却施設近傍では、その施設がバグフィルターと排ガス洗浄設備を備えているにもかかわらず、空気中にセシウムを含むダストが舞上がる「二次汚染」の可能性が報告されています(※7)。一般焼却炉は、放射性物質に汚染された廃棄物を燃やすことを前提につくられていません。排ガス処理装置を含む焼却炉そのものが汚染され、メンテナンスに困難が生じることも予想されます。

放射性物質は焼却しても分解することはなく、燃焼により発生し高温で分解するダイオキシンとは全く異なる性質のものです。一般焼却炉で通常処分を行うのではなく、放射性物質を捕捉する機能を十分に備えた施設を用意し、処理する必要があります。

<3.埋立における問題点>

既存の管理型最終処分場には、有害な汚水が環境にしみ出さないよう底面や側面に遮水シート等が敷設されていますが、破損による汚水漏れ事故が全国各地で頻発しています(※8)。

環境省は2011年6月13日、次の通り基準を定めました(※3)。

焼却灰の放射能量(放射性セシウム合計) 処分方法
8000ベクレル/kg 以下 通常埋立
8000~10万ベクレル/kg 一時保管(飛灰も同様の処分)
10万ベクレル/kg 以上 遮蔽施設で保管

さらに環境省は、2011年7月14日、放射性セシウムが8000~10万ベクレル/kgの焼却灰についても、水汚染対策と長期管理を条件に埋立処分を認める方向で検討すると表明しました(※9)。各自治体で焼却処理した灰から8000~10万ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されたら、覆い(屋根等)や外周遮断設備(コンクリートピット)をもつ処分場を設け、数十~数百年にわたって管理していく必要が生じ、各自治体にとって大きな負担になります。

また廃棄物処理は、自治体のみならず民間業者も担っていますが、廃業・倒産のリスクがある民間企業が、数十~数百年ものあいだ確実に放射性物質を管理できるでしょうか。環境省は7月、市町村から災害廃棄物処理を委託された民間業者が下請けへ再委託することを認めましたが(※10)、数十~数百年ものあいだ再委託先の管理状況を把握し続けることは困難です。放射性廃棄物の埋立処分にあたっては、長期にわたって責任をもって管理する予算・人員・設備体制が必要です。

<4. 核種について>

原子力安全・保安院は、2011年6月6日、東京電力福島第一原発から放出された放射性物質の核種と濃度を発表しました(※11)。全部で31種の放出が報告されています。

1986年のチェルノブイリ原発事故については、セシウム137(半減期30年)とストロンチウム90(半減期29年)の影響が、現在でも深刻であると言われています。環境省は東京電力福島第一原発事故について、セシウム134及びセシウム137を「支配的な核種」と位置づけ(※3)、ストロンチウム90の割合は少ないとし(※12)、廃棄物処理の安全性についても主に放射性セシウムについて調査しています(※13)。

しかし、放射性物質は核種によって性質や有害性が異なり、プルトニウム238、プルトニウム239のように微量でも影響の大きい核種もあります。放射性ストロンチウムや放射性プルトニウムの測定には別の測定器等が必要であり、時間もかかります。しかし、事故の影響が十分に検証されていない現在、放射性セシウム以外の核種についても測定しないと、安全とは言い切れません。

■2. がれき問題年表

2011年 4月
  • 環境省が全国の市町村に震災がれきの受入を打診。

  • 【川崎市】市長ががれき受け入れを表明し、市役所へ2000件以上の問い合わせ。

  • 4/12、東京電力福島第一原発事故が「レベル7」認定(チェルノブイリ事故と同等)。

5月
  • 環境省が福島県内のがれきについて、県西部(会津)は通常処理を認める。

  • 京都市など全国500以上の市町村等ががれき受入可能と回答。

  • 【京都市】5/12京都新聞に掲載され、市役所へ500件以上の問い合わせ。

  • 環境省が福島県内のがれきについて、県中央部(中通り)10町村も通常処理を認める。

6月
  • 静岡県産の茶葉(製茶)から暫定基準値を上回る放射性セシウム検出。

  • 環境省が福島県沿岸部と中央部(警戒区域と計画的避難区域を除く)のがれきについて「8000ベクレル/kg以下の焼却灰・不燃ごみは一般処理場に埋立可能」と表明。

  • 【京都市】市民有志が京都市役所に3170筆の署名を提出。

  • 北海道から大阪までの16都道府県で下水汚泥から放射性セシウムを検出していたことが判明。(福島市 44万7000Bq/kg▽東京都 5万5000Bq/kg▽前橋市 4万2800Bq/kg▽宇都宮市 2万6000Bq/kg)

7月
  • 千葉県のごみ焼却灰(放射性セシウム2万8100Bq/kg)が秋田県へ搬出されていることが判明。

  • 全国で牛肉から暫定基準値以上の放射性セシウム検出。

8月
  • 環境省「10万ベクレル/kgまでの焼却灰を一般処理場に埋立」と方針を表明。

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※1 従来基準(放射性セシウム合計100Bq/kg)は、原子炉等規制法のクリアランスレベル10μSv/年を満たす放射能量の目安として、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第61条の2第4項に規定する製錬事業者等における工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質の放射能濃度についての確認等に関する規則」に記載されている数値による。

※2 高木仁三郎(原子力資料情報室 元代表)著書「原子力神話からの解放」(講談社プラスアルファ文庫 2011年、初版は光文社カッパ・ブックス 2000年)によると、100万kW級の原発1機を廃炉にする際の解体廃棄物処理費用が、クリアランス制度を適用しないケースでは6,320億円、適用したケースでは263億円と試算されている。

クリアランス制度グラフ

▲ 前掲書P284 原子力資料情報室作成のグラフをもとに作図ケース1:クリアランス制度を適用しないケースケース2:クリアランス制度を適用したケース

※3 環境省「福島県内の災害廃棄物の処理の方針」(2011年6月23日) http://www.env.go.jp/jishin/attach/fukushima_hoshin110623.pdf

※4 青木泰(環境ジャーナリスト)「がれき処理、まず放射能汚染のチェックが必要」(2011年8月8日)を参考に作表 http://gomitanteidan.blogspot.com/2011/08/20110808.html

※5 電離放射線障害防止規則に定める基準により、3ヶ月につき1.3ミリシーベルト〔2.5マイクロシーベルト/時〕を超える箇所を、放射線管理区域として立入を制限している。 http://www.city.maebashi.gunma.jp/kbn/18700030/18700030.html

※6 日本弁護士連合会「放射能による環境汚染と放射性廃棄物の対策についての意見書」(2011年7月29日) http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/110729_2.pdf

※7 山内知也(神戸大学大学院海事科学研究科教授)「放射能汚染レベル調査結果報告書 東京都江東区における放射能汚染レベルと東部スラッジプラントが抱えている問題」(2011年5月30日)

※8 遮水工破損による汚水漏れ事故は、東京都八王子市戸吹処分場(1985年)、東京都西多摩郡日の出町谷戸沢処分場(1992年)、千葉県八千代市一般廃棄物処分場(1994年)、神奈川県横浜市神明台処分場(1994年)、愛知県津島市新開処分場(1996年~)、福岡県久留米市杉谷最終処分場(2006年)、熊本県阿蘇市黒川 阿蘇広域行政事務組合一般廃棄物処分場(2009年)、島根県東出雲町 姫津クリーンセンター(2008年)、滋賀県甲賀市 クリーンセンター滋賀(2010年)、山梨県北杜市明野町 山梨県環境整備センター(2011年)等が報告されている。

※9 環境省 第四回災害廃棄物安全評価検討会 資料「一時保管の後の安全な処分方法等に関する論点(案)」(2011年7月14日) http://www.env.go.jp/jishin/attach/haikihyouka_kentokai/04-mat_4.pdf

※10 「被災市町村が災害廃棄物処理を委託する場合における処理の再委託の特例措置」(平成23年政令第215号、平成23年環境省令第15号)

※11 原子力安全・保安院「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について」(2011年6月6日)13ページに、事故で放出された放射性物質の種類と濃度が記載されている。 http://www.meti.go.jp/press/2011/06/20110606008/20110606008-2.pdf

※12 原子力安全委員会「6月8日付け『環境モニタリング結果の評価について』の補足説明資料(ストロンチウムに関して)」(2011年6月10日)に、「チェルノブイリ事故では、Sr/Csの割合は約1/9と言われています。今回の文部科学省発表の結果では、福島の土壌のSr/Csは、約 1/2000~1/10000となっています」と書かれている。 http://www.nsc.go.jp/nsc_mnt/110610_3.pdf

※13 環境省 第三回災害廃棄物安全評価検討会 資料7「福島県内の放射性物質により汚染されたおそれのある廃棄物の処理にかかる調査について」(2011年6月19日)に、空間線量をNaIサーベイメータ、放射能量をゲルマニウム半導体検出器で調査するとある。しかしこれらではガンマ線しか測定できず、ベータ線を発するストロンチウム90、アルファ線を発するプルトニウム238、プルトニウム239等を測定することはできない。 http://www.env.go.jp/jishin/attach/haikihyouka_kentokai/03-mat_6.pdf 1ページ


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